田崎線の開通

4629-M29
最盛期の熊本駅前

 昭20年代は国鉄の乗客は増加し、熊本駅での乗降客数も著しく伸びた。しかし駅舎はすでに老朽化しているため、新しい熊本の玄関にふさわしい熊本駅を建設することになり、昭30年代に入ってから現在の駅舎の工事と駅前広場の整備が始まった。

 一方市電も乗客が増加し、駅南部の田崎地区では市電の路線延長を望む声が強くなり、市電田崎線延長期成会も結成された。

 市電幹線の熊本駅前は駅舎の直前まできていたが、田崎線延長のためには電停の移設が必要であるため、駅前広場の工事と合わせて、昭31(1956).11.10〜12.16にかけて工事費550万円で軌道移設工事がなされた。田崎線の延長工事はその後すぐに行われる予定であったが、道路拡張や立ち退き問題が絡み、実際に工事が始まったのは、熊本国体を翌年に控えた昭34(1959).10.21であった。

 田崎線(熊本駅前〜田崎橋)は幹線の延長という形で工事が進められ、工費に約2,000万円が費やされた。複線357m、単線239mのミニ路線で、途中に1か所停留場が設けられた。

4629-17 4629-16
田崎線開通のテープカット 開通記念の装飾電車202号

 田崎線の開通式は工事開始からわずか2か月後の昭34(1959).12.24、10:00から田崎橋の電停で行われた。当時の木庭局長のあいさつのあと、坂口市長をはじめ、市議会議長、交通副委員長、期成会会長らの祝辞があり、10:25坂口市長のテープカットのあと、爆竹を合図に装飾電車2両が熊本駅前と田崎橋を同時にスタート(田崎橋発は202)し、開通式は無事終了。その直後から営業を開始した。

 田崎線の開通により、1が田崎橋まで延長運転された。従ってこれまで熊本駅前では1と2の両系統を交互に出発させていたが、その必要がなくなった。また営業路線長も25.2kmと最長になった。